
「63歳から新しい仕事を始めるなんて、自分にできるだろうか……」
そんな不安を抱えながらスタートしたホームセンターでのレジのお仕事。
あれから月日が流れ、今の私にとってこの場所は、たくさんの「元気と感動」をもらえるかけがえのない宝箱のような空間になっています。
広い店内、20台近くあるレジを交代で回る目まぐるしい日々。それでも、ふとした瞬間に生まれるお客様との温かい会話や笑顔が、私の背中をそっと押してくれるのです。
今回は、私が日々働く中で心から「この仕事をやっていてよかった!」と感じた、思わず笑顔になり、胸がじーんと熱くなった2つのエピソードをご紹介します。
「手作りの約束」を守って訪ねてきてくださったご夫婦と、ハイビスカスを手に驚くほど颯爽とした90歳の素敵なおばあちゃん。
どうぞ、少し立ち止まって、温かいお茶でも飲みながら読んでみてくださいね。
エピソード1:2ヶ月前の約束。「あんたや!やっと見つけたで」
ホームセンターのレジ担当は、約20台あるレジをローテーションで回ります。そのため、いつも同じ場所でお客様をお迎えできるわけではありません。
そんなある日のこと。
「あ〜!あんたや!あんたや!覚えてるか?やっと見つけたで!」
声をかけてくださった男性の顔を見て、一瞬で記憶が蘇りました。
「あ〜!あのたくさんの耐熱ビンの……!」 「そうそう!」 「奥様とジャムを作られるっておっしゃっていた!」
2ヶ月ほど前、耐熱瓶を20個近くお買い上げいただいたお客様でした。
あまりの数の多さに「何に使われるんですか?」とお尋ねしたところ、「奥さんと一緒にジャムを作るんだよ」と嬉しそうに教えてくださったのです。
「出来上がったら、あんたにやるよって約束したやろ。忘れてへんで〜」 「あ〜!思い出しました!」 「ほら、出来たで!」
そう言って差し出されたのは、瓶にたっぷり詰まった色鮮やかな手作りのマーマレードジャム!
「あ〜、やっと渡せてスッキリしたで〜!」
私がいつも違うレジにいるため、わざわざ探してくださっていたのです。「本当にいただけるなんて……!」と驚きと感謝で胸がいっぱいになりました。
「ありがとうございます!とっても嬉しいです。奥様にもどうぞよろしくお伝えください!」 「あ〜、伝えとくわ!」
お客様の笑顔を見送りながら、手の中にある温かいジャムの瓶をぎゅっと握りしめました。
小さな会話から生まれた約束を、こんなにも大切にしてくださっていたこと。接客業の本当の喜びを感じた瞬間でした。
エピソード2:ハイビスカスとスマホ決済。90歳おばあちゃんの「ボケ防止よ!」
続いては、セルフレジでの出来事です。
色鮮やかなハイビスカスの鉢植えを大切そうに抱えた、一人の小柄なおばあちゃんがセルフレジへやってきました。片手にはスマートフォン。
「セルフレジ、操作大丈夫かな……?」 心配になった私は、さりげなく寄り添いながら見守ることにしました。
すると、どうでしょう! おばあちゃんは迷いなくお店のアプリをかざして「ピッ!」。 続いて、手際よくハイビスカスのバーコードを読み取らせて「ピッ!」。
さらに驚いたのはお支払いです。 最近でこそPayPayなどのバーコード決済を使われるシニア世代は増えましたが、おばあちゃんが選んだのは……「スマホのタッチ決済」!
機械にピッとスマホをかざし、あっという間に会計を終わらせてしまったのです。あまりに見事な手際に、私が目を丸くして感心していると、おばあちゃんはくるりと振り返り、にっこり笑って一言。
「ボケ防止よ!」
そのお茶目でチャーミングな笑顔に、キュンとしてしまいました! 思わず「失礼ですが、おいくつになられるんですか?」とお聞きすると、
「90歳よ。大好きな花なの」
と教えてくださいました。二度びっくり! 背筋がピンと伸びてシャンと立ち、抱えられた鮮やかなハイビスカスが本当によくお似合いの、気品あふれる素敵なおばあちゃんでした。
63歳、これからも元気に笑顔で
手作りジャムを届けてくださったご夫婦の「優しさ」。
90歳になっても新しいことに挑戦し、好きなものを愛でる「生き生きとした姿」。
63歳から始めたこのホームセンターのお仕事で、私は毎日お客様からたくさんの元気と感動、そして人生の大切なヒントをいただいています。
「今日も誰かの1日を少しだけ明るくできますように」 そんな思いを込めて、私は今日も笑顔でレジに立ち続けます。
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