【実体験】歯周病と歯の放置が招いた後悔…歯科衛生士の娘の忠告と、夫を見送って痛感した「歯の大切さ」

3回目の結婚生活

「歯医者さんって、虫歯が痛くなってから行く場所じゃないの?」

今から20年前、歯科衛生士として働く娘から「歯のクリーニングにおいでよ」と誘われたとき、私は本気でそう聞き返してしまいました。

当時の私にとって、歯科医院は“削って治す場所”。しかし、予防のために通う心地よさと大切さを知ってからは、年に3回の定期クリーニングが欠かせない習慣になっています。

一方で、私の夫は正反対の人生を歩んでいました。

船乗りという過酷な環境で歯のケアを後回しにし、激痛を自己流で耐え忍んできた人でした。

結婚を機に一度は歯科医院へ足を運んだものの、その後の通院や毎日の歯磨きを拒み続けた結果、待っていたのは過酷な現実でした。

咽頭癌の闘病、次々と欠けていく9本の歯、そして「食べる楽しみ」を奪われた2年間——。

今年4月に夫を見送った今、強く心に残っているのは「もっと歯を大切にしていれば、違う未来があったかもしれない」という消えない思いです。

大切な歯を守ること、そして美味しくご飯を食べられることが、いかに命の活力に直結しているか。わが家の実体験を通してお伝えします。

「痛くないのに歯医者?」20年前に知った予防とクリーニングの心地よさ

20年前、歯科衛生士の娘から「歯のクリーニングするから来てね」と言われたときの驚きは、今でも忘れられません。

「えっ! 歯は痛くないよ」

「クリーニングよ! 歯科医院は虫歯の治療をするだけじゃなくて、予防をするところでもあるのよ」

半信半疑で医院へ向かった私を待っていたのは、想像以上の爽快感でした。

終わった後は口の中が本当にすっきりと気持ちよく、正しい歯磨きの方法や磨き残しやすいポイントまで丁寧に指導してもらいました。

「なるほど、こういうことだったのか!」と深く納得し、それ以来20年間、年に3回の定期クリーニングを欠かさず続けています。

ドアノブに糸を結んで抜歯…夫の過酷な過去と深刻な歯周病

62歳のとき、高校の同級生だった元カレと再婚しました。

夫は長く船乗りをしており、簡単には歯医者に行けない過酷な環境で生きてきた人でした。

あるとき虫歯の激痛に耐えかねた夫は、信じられない行動に出ます。

なんと、痛む歯に糸をくくりつけ、もう片方を部屋のドアノブに結びつけ、ドアを「バタン! バタン!」と勢いよく閉めたというのです。

3日かけて無理やり歯を抜いたと聞き、背筋が凍る思いがしました。

そんな話を聞いていたため、結婚前に「一度クリーニングに行ってみよう」と誘いました。

そのときは素直に従ってくれたのですが、診断結果は深刻な歯周病。自己流で歯を抜いた影響もあり、上顎には見たこともない形状の突起ができていました。

歯科医からは「今のうちにきちんと通院したほうがいい」と言われ、娘からも「歯周病はバイキンの宝庫。全身の病気や癌の原因の一つにもなるからね」と強く警告されていました。

「指図するな!」結婚後に途絶えてしまった夫のオーラルケア

しかし、夫が素直に歯科医院へ行ったのは結婚前の一度きりでした。

「俺は“院”という名のつくところには行かん!」

「俺に指図するな! 俺のことは俺が自分で決める!」

頑固さを発揮した夫は、通院どころか毎日の歯磨きさえまともにしなくなってしまいました。

「歯磨きしたほうがいいよ」と声をかけても「してるよ、お前が見てないだけや」と突っぱねられ、次第に私も何も言えなくなってしまいました。

娘の不吉な予言は、4年後に現実となってしまいます。

夫は咽頭癌を患い、今年4月に帰らぬ人となりました。

闘病中に次々と欠けた9本の歯…失われた「食べる楽しみ」

癌が発覚し、抗がん剤治療が始まると、夫の体力は目に見えて落ちていきました。

追い打ちをかけたのが、ボロボロになっていた歯の崩壊です。

ある日「歯が折れた」と言うので口の中を見ると、抜けたのではなく根元を残して途中で欠けていました。

そこから信じられないスピードで、次から次へと歯が折れていき、気づけば9本もの歯が欠けてしまっていたのです。

歯科医からは「すべての歯が欠け終わるまで、入れ歯は作れません」と告げられ、その状態のまま数ヶ月を過ごすことになりました。

固いものは一切噛めません。

毎日の主食は、柔らかく炊いたご飯に、すりおろした長芋と生卵をかけたもの。他の食材も極限まで細かく刻んで出す日々が、闘病中の約2年間続きました。

「食べる楽しみが無くなった……」

力なくそう呟いた夫の横顔が、今も胸に焼き付いています。

もし自分の歯でしっかり噛んで、栄養のあるものを美味しく食べられていたら、もっと体力もついて長く生きられたのではないか——そう思えてなりません。

夫を見送って痛感した「歯を守ることは命を守ること」

歯周病や虫歯を放置することは、ただ「口の中が痛む」だけでは終わりません。

全身の健康を蝕み、いざというときの体力や、生きる喜びそのものを奪ってしまう怖さがあります。

「痛くなってから行く」のではなく、「痛くならないために行く」。

自分の歯で生涯美味しくご飯を食べるために、定期的な歯科検診とクリーニングの大切さを、一人でも多くの方に届いてほしいと心から願っています。

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