今年で70歳。振り返れば、62歳のときに人生で3回目となる結婚をしました。お相手は、なんと高校時代の同級生であり、元カレでもあった夫です。
青春時代を共に過ごし、それぞれの人生を歩んだ末、長い年月を経て再び結ばれた私たち。
こうして書くと、まるでドラマのようなロマンチックな再会劇に聞こえるかもしれません。ですが、現実はそんなに甘いものではありませんでした。
ふと「これまで彼から一体どんな物を貰ってきたのだろう?」と思い返してみると、そこにはロマンチックとは程遠い、トンチンカンで、不器用で、時には「バカヤロー!」と叫びたくなるようなプレゼントの数々がありました。
高校生の頃の「何もくれない彼氏」から始まり、10代、30代、そして60代の再婚後まで。
夫から貰った歴代の品々と、すれ違い続けた私たちの歩みをお話しします。

高校生〜18歳の頃:手編みマフラーへの無反応と、謎の「殻付き胡桃」
高校生の頃の思い出をたぐり寄せてみても……ない。
本当に何一つ、彼からプレゼントを貰った記憶がありません。
当時の私は健気にも、クリスマスに一生懸命編んだ手編みのマフラーをプレゼントしました。
それなのに、返ってきたのは「ありがとう」の一言すらなし。
今思えば、この頃から彼の不器用というか、人の気持ちを受け取るのが下手な一面が見え隠れしていたのかもしれません。
高校を卒業し、社会人になった18歳の頃。ようやく彼から初めてのプレゼントを貰いました。
差し出されたのは、なんと「殻付きの胡桃(くるみ)2個」。
「握力つくから」
そう言って渡されたのですが、年頃の女の子に胡桃を2個渡して「握力をつけろ」とはどういうことなのか……。まったく訳が分かりませんでした。
その後に貰ったのは、阿寒湖のお土産の「マリモ」。 「まりもは1年に1cm大きくなる。俺たちも一緒に大きくなろうな」
そう照れくさそうに言っていた彼は、どうやら将来の結婚まで見据えていたようです。
しかし、当時の私にはそんな気はさらさらありませんでした。
もらったマリモは実家の冷蔵庫の片隅に入れておいたものの、数年後、母にあっさりと処分されてしまいました。
34歳、大阪花博での再会:胡蝶蘭とトップガン
18歳で別れてから、それぞれの道を歩み、気がつけば15年。34歳の時、大阪花博で久しぶりに再会することになりました。
その時、彼が持ってきてくれたのは「胡蝶蘭の鉢植え」でした。 せっかくの立派な蘭でしたが、置き場所に困って湿気の多いお風呂場に置いてしまい、残念ながら1ヶ月ほどで枯らしてしまいました。
一方の私は、通勤の車内でモチベーションを上げるためにいつも聴いていた「トップガン」のサウンドトラックCDをプレゼント。
「元気が出るから聴いてみて」と渡したのですが……後に再婚して彼の家に入った時、そのCDの姿はどこにも見当たりませんでした。
お互いに良かれと思って渡したものが、見事にかみ合わない。この頃から、私たちのプレゼント観のズレは決定的だったのかもしれません。
61歳、再婚前のデート:腕時計とお菓子の手土産
それからさらに月日が流れ、お互いに60代を迎えた頃。再び縁がつながり、再婚の話が持ち上がりました。
61歳の私の誕生日、彼がプレゼントしてくれたのは「腕時計」でした。
私が普段、時間を確認するのにいちいちバッグからスマホを取り出しているのを見て、「腕時計があったほうが便利だろう」と選んでくれたそうです。
(実は私、腕時計をするのがあまり好きではないのですが……) その気持ちだけは嬉しかったので、「ありがとう!」と笑顔で受け取りました。
また、結婚前のデートのたびに、私の孫たちが喜びそうなお菓子のお土産をたくさん用意してくれました。両手いっぱいにお菓子を抱えて喜ぶ孫の姿を見て、私も本当に胸が温かくなりました。「優しい人だな」と素直に思えた瞬間でした。
……しかし、そんな温かい気持ちを一瞬で吹き飛ばす事件が起こります。
バレンタインデーに、孫と私から彼へチョコレートをプレゼントした時のことです。受け取った彼から返ってきたのは、感謝の言葉ではなく信じられない一言でした。
「こんな婆さんから告られてるように見られるのは嫌だな……」
冗談のつもりだったのかもしれません。けれど、孫と一緒に選んだ気持ちを土足で踏みにじられたようで、私は心の底から「なんて嫌な性格なんだろう! バカヤロー!」と憤慨しました。
62歳で再婚:私の好みは度外視、気分次第のプレゼント
波乱を含みつつも、62歳で彼と3度目の結婚をしました。 すると、結婚するやいなや夫はこう宣言したのです。
「誕生日のプレゼントとか、何もいらないからな! サプライズも大嫌いだから絶対にするなよ!」
そう釘を刺された通り、もちろん私の誕生日にもプレゼントなど一切ありません。
その代わり、夫は自分が「気分がいい時」に限って、突然大きな顔をして「ほらっ!!」と洋服を買ってくるようになりました。
完全に夫の趣味・好みの服で、私の好みは完全に度外視。「自分好みの女に仕立てたい」という気持ちが透けて見えます。
たまにユニクロへ連れて行かれても、「好きな物を選べ!」と上から目線。 私はもともと物欲があまりなく、必要なもの以外は欲しくありません。
「欲しい」と言ってもいないのに、夫の機嫌を損ねないよう仕方なく選んで買ってもらった服は、結局ほとんど着ないままタンスの肥やしになっています。
着ていなくても夫は何も言いません。要するに、「買ってやった自分」に満足しているだけで、私が実際に着ているかどうかなど見てすらいないのです。「あぁ、本当にお金が勿体無い……」とため息が出ます。
これまで貰った洋服の中で唯一本当に嬉しかったのは、私が職場で着るための実用的な服を買ってくれた時だけでした。
「若い時に結婚しなくて本当に良かった」
18歳で別れ、62歳で再婚した私たち。
夫の言動を見ていると、相手が何を必要としているか、どう感じるかという「相手の気持ち」を想像することがとても苦手なのだと感じます。
何かを渡す時も、どこか「ありがたく思え!」と恩を着せられているように感じてしまい、素直に感謝できない自分がいました。
暮らしの中で夫の身勝手さや無神経さに直面するたび、私は何度も心の中でこう思いました。
「あぁ……若い時にこの人と結婚しなくて、本当に良かった!!」
若気の至りで勢いのまま結婚していたら、きっと早々に大爆発していたことでしょう。
酸いも甘いも噛み分けた60代だったからこそ、「まぁ、こういう人なんだわ」と呆れつつも受け流すことができたのだと思います。
思い通りにならないプレゼントの数々も、今となっては呆れ笑い混じりの、私たちなりの歴史の1ページです。
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