「もっと早く病院へ行かせていれば……」 主人が右下咽頭癌で旅立ってから、そんな後悔ばかりが頭を巡ります。
5年前、風邪でもないのに突然枯れた声。 「そのうち治る」という主人の言葉を信じ、1年もの月日を放置してしまったことが、今も悔やまれてなりません。
少し体にガタが来始める年代にとって、「ただの不調」と「病のサイン」を見極めるのは本当に難しいものです。でも、私たちの経験が、誰かの「明日」を変えるきっかけになれば。
最後まで「1日でも長く生きたい」と願い続けた主人の1年間の闘病と、今伝えたい想いを綴ります。
異変の始まりは「2ヶ月治らない声枯れ」と「五十肩のような痛み」
最初は、ほんの些細なことでした。風邪を引いていないのに声が枯れ、2ヶ月、3ヶ月と経っても戻らない。主人に受診を勧めましたが、「大丈夫」の一点張りでした。
やがて肩の痛みを訴え、整形外科へ。一度は行ったもののリハビリを拒み、自力で治そうとした主人。しかし、痛みは増し、車の運転も片手でしかできなくなっていました。
「血が出たのに痛くない」その一言で時が止まった
運命の日、主人が髭を剃っている時に頬を切ってしまいました。 「切ったのに、全く痛くない。変や」 その事態に驚き、ようやく精密検査を受けた結果は、咽頭がんのステージ4。首にはゴルフボールほどの大きさの腫瘍がありました。
放射線治療、そしてコロナ禍での院内感染という過酷な試練。癌は小さくなったものの、副作用で右腕の自由を失い、激痛と闘う日々が始まりました。
余命宣告からの1年。片手で咲かせた希望の花
転移が見つかり、「治療法がない」と余命宣告を受けたのは1年前のことでした。 絶望の中、主人は在宅診療を選び、最後まで自分らしく生きることを決めました。
「1日でも長生きしたい」 その言葉通り、動かなくなった右腕を三角巾で吊りながら、左手だけで庭にたくさんの花を咲かせてくれました。便利グッズを使いこなし、美味しい手料理も作ってくれました。
主人が遺した庭の花々は、今も主人の「生きたい」という強いエネルギーを物語っているようです。
最後に見せた「バイバイ」の手
亡くなる数日前、主人は誰かに宣言するようにこう言いました。 「残念です!僕はこのまま死んでしまいます!」
それは、自分の運命を受け入れつつも、最後まで生に執着した主人の精一杯の叫びだったのかもしれません。
そして亡くなる前日、病室を後にする私にベッドから小さく「バイバイ」と手を振ってくれた姿。それが、私が見た主人の最後の姿となりました。
まとめ:読者の皆様へ
もし、身近な人が「声が枯れている」「肩の痛みが治まらない」と言っていたら、どうか無理やりにでも病院へ連れて行ってあげてください。「あの時、もっと強く言っていれば」という後悔を、あなたにはしてほしくないのです。
主人は旅立ってしまいましたが、彼が最後まで見せてくれた「生きる姿」を、私は一生忘れません。
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