18歳、社会人一年目の春。
何も知らなかった私が足を踏み入れたのは、13泊14日という長い新入社員研修でした。
あれから52年、70歳になった今、ふとあの日々を思い出しました。
日本中から集まった100人の仲間、研修先での夫とのときめき、親友との出会い。
今回は、そんな青春の記憶と、健康寿命を意識して「今、富士山を見に行こう」と決めた私のささやかな冒険の記録を綴ります。

1974年、18歳の春。13泊14日の旅が始まった
今から52年前の1974年、私は名古屋に本社を置くカーフェリー会社に就職しました。
当時18歳。奇跡的な偶然ですが、高校の同級生だった今の夫も同じ会社を選び、二人とも無事に合格。相談もしていなかったのに、私たちの社会人生活は同じ船出となりました。
新入社員は100名。大分、名古屋、仙台、苫小牧と全国各地の港から集まった若者たちです。
バスの中での自己紹介は、なんとアカペラで歌を歌うという少し無茶なもの。
私は「りんごの唄」を大分弁で歌いました。今思い返しても、あの時の緊張と高揚感は忘れられません。
御殿場での研修は、まるで修学旅行
研修地は静岡県の御殿場でした。
朝6時起床、ラジオ体操から始まる毎日。
社会人としての心構えを学ぶ時間は少し硬かったかもしれませんが、合間のソフトボール大会や観光地巡りは、まるで修学旅行のような楽しさでした。
中でも忘れられないのが、元アナウンサーの方による船内放送の実演です。あまりの美しさにみんなで歓声を上げたほどです。
あんなに楽しくて、その上お給料までいただけるなんて、本当にすごいことだと感動したものです。
初めて出会った 一生の「親友」 と「彼からのメモ」
この研修では、大切な人と出会いました。
一人は、70歳の今も親友である女性。東北弁で豪快に笑う彼女に、当時の私は衝撃を受けました。
彼女と一緒にいるだけで心が震えるほど楽しかった。
もう一人は、若き日の夫です。私に胡桃を渡し、「握力つくから」と言い残したメモに書かれていた「大好きだよ」の文字。あの頃の彼は、誰からも愛される人当たりの良い青年でした。
あの時の彼が、62歳からの8年間の結婚生活を経て、晩年には般若のような怖い顔に変わってしまったのは不思議なものです。
今年の4月に彼が天国へ旅立った時、涙が出なかったのは、思い出が当時のままではなかったからかもしれません。
「今日が人生で一番若い日」だから、富士山へ
研修の仲間の中には、すでに天国へ旅立った友人も何人かいます。病気や事故……。人生の短さを突きつけられることもあります。
最近、テレビで富士山登山のニュースを見て、「富士山が見たい」という衝動に駆られました。ただそれだけの理由で、河口湖駅近くのホテルを予約しました。
これまで、自分にお金を使うことをためらってきた私に、娘が言ってくれた言葉が背中を押してくれました。
「みっちゃんは自分にお金を使わなさ過ぎやから、使ってもいいと思うよ」
女性の健康寿命の平均は75歳と言われています。あと5年。動けるうちに、見たいものを見て、行きたい場所へ行く。
「今日が人生で一番若い日」。
そう心に刻んで、これからも充実した日々を積み重ねていこうと思います。
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