【70代の日常】ガーデニング歴30年の夫が遺してくれたもの|ホームセンター店員が気づいた「土と花の楽しさ」

3回目の結婚生活

62歳で3回目の結婚をした私。

夫はガーデニング歴30年の筋金入りのベテランで、対する私は「お花は綺麗だな〜」と眺めるだけの超初心者でした。

花の名前すらろくに知らなかった私が、いまやホームセンターの園芸コーナーで嬉々として花の手入れをしています。

2026年4月に夫が旅立ってから、ふとした瞬間に思い出すのは、庭で土をいじりながら彼が教えてくれたたくさんのこと。

褒められた記憶はほとんどなく、ダメ出しばかりの日々でしたが(笑)、教わった知識のすべてが今の私の仕事と暮らしを驚くほど豊かにしてくれています。

知れば知るほど、土に触れれば触れるほど面白くなるガーデニングの魅力と、ちょっぴり頑固な夫との懐かしい思い出をお届けします。

「早くお嫁に行くんだよ〜」ホームセンターで見つけた天職

私の職場は大型ホームセンター。

普段はレジ担当ですが、ガーデンコーナーのレジに入るときは、売り場の花苗や寄せ植えのお手入れもお手伝いします。

ある日、少し蒸れ始めて元気がなくなってきた「寄せ植えちゃん」を発見。「よしよし、綺麗にしてあげるからね〜」と傷んだ葉や花がらを摘み取ります。

花の命は短いからこそ、一番綺麗な姿でお客様の元へお嫁に出してあげたい。

ふと、生前の夫の声が頭をよぎります。

「売り物やぞ!家の花と同じようにバサバサ切るな。切りすぎるな!」

確かにその通り。

家庭菜園なら思い切って切り戻してもまた咲きますが、お店に並ぶ花は「今この瞬間の見栄え」が何より大事なんですよね。

「早く素敵なお家に嫁ぐんだよ〜〜」と心の中で声をかけながら手入れをする時間は、本当に楽しくて仕方がありません。

「こんなに楽しい作業をして、お給料までいただいていいの!?」と思ってしまうほど、今の私にとっては最高にやりがいのあるお仕事です。

夫の言いつけを破って「こっそり花壇」へ…

夫は土へのこだわりがとても強い人でした。

「一度使った土は虫や菌がいるから、全部処分する」というのが夫の鉄則。

でも、根っからのもったいない精神が染み付いている私。

「え〜〜っ、まだまだ使えそうなのに捨てるなんて勿体無い…!」と、夫の目を盗んで、処分予定だった土をこっそり庭の花壇に足してしまったのです。

事件(?)が起きたのは、それから数ヶ月後のことでした。

庭に出た夫が、目を丸くして大声をあげました。

「……なんでこんなとこに、カラーが咲いてんねん!?」

あっ、バレた!

実は、捨てられそうになっていた土の中に小さな球根が混ざっていたのです。「捨てるのは可哀想だし勿体無い」と、そのまま花壇の土に埋め込んでおいたのでした。

夫の話を聞くと、そのカラーは鉢植えで2年間まったく花が咲かなかったため、3年目の今年、土ごと処分するつもりだったのだそう。

鉢の中では沈黙していた球根が、広々とした花壇の土(地植え)に移された途端、見事な花を咲かせたのです。

勝手に土を花壇へ撒いたことへの怒りよりも、2年も咲かなかったカラーが咲いたことに心底驚いていた夫。

その日を境に、頑固だった夫はぽつりとこう言いました。

「……古い土も、これからは再生材を混ぜて、もうちょっと使ってみるか」

知れば知るほど、植物はおもしろい

私のズボラともったいない精神が、まさかベテラン夫の長年のルールを変えてしまうなんて、今思い出してもクスッと笑ってしまいます。

花や土の性質を知ると、毎日の景色がガラリと変わります。そして、植物のたくましい生命力にはいつも驚かされ、元気づけられます。

不器用でも、専門知識が完璧でなくても大丈夫。

土に触れ、花を愛でる楽しさを、これからも日々の仕事や暮らしの中でめいっぱい味わっていきたいと思います。

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